美宝(メイバオ)は忠良(チョンリャン)が好き。心仁(シンレン)は美宝に片想い。そして、忠良が好きなのは――。1985年から2012年までの激動の台湾社会を背景に、3人の男女の切ない愛と友情を描いた感動の青春映画。自由ではないものの情熱に満ちていた時代、その後民主化された台湾で、それぞれの関係に傷つき悩みながら年齢を重ねていく彼らが選択した幸せとは?
監督はデビュー作の『Orzボーイズ!』(08)が評価されたヤン・ヤーチェ。80年代後半から90年代にかけて青春を送った監督が自ら脚本を手がけ、自身の経験を踏まえて時代の雰囲気を巧みに映し出した。ロケ地の7割を占めたのは主人公たちの故郷である高雄だが、そのほかにも基隆や台北、新竹など数十ヶ所でのロケを行い、美術においてもできるだけリアリティを追求したという。また、シンガーソング・ライターの羅大佑が1984年に発表した『家』や、70年代の台湾民謡をベースにした『美麗島』をはじめとする歌も本作の重要な要素となっている。
そして、監督の期待に応えるべく3人の俳優が入魂の演技を披露している。報われない愛に苦しむ美宝に扮したグイ・ルンメイ、誰にも言えない想いを抱える忠良役のジョセフ・チャン、自由のために闘いながらやがて変節する心仁を演じたリディアン・ヴォーン。彼らに求められたのは高校、大学、社会人という3段階を演じ分けること。加えてジョセフ・チャンは40代を演じる必要もあった。3人がそれぞれ難しい役柄に挑戦して見事に演じ切ったことにより国内外で高い評価を受けた本作は、彼らの代表作となった。おそらく今後も代表作として、彼らのプロフィールのなかで輝き続けることだろう。