病気のために夢を諦めた女性が偶然再会した同級生の若者と織り成す切なくも爽やかなラブストーリー。キム・レウォン、イム・スジョン主演による2003年の韓国映画『アメノナカノ青空』をベースにしながら、新たな設定や趣向を凝らした構成で、鮮やかに描かれている。
監督・脚本は弱冠29歳(撮影時)の新鋭ハン・イエン。ヒロインの家のインテリアをはじめファッションや小物など、すべてをカラフルな可愛いもので埋め尽くした。ヒロインの心情をアニメーションで描き出すメルヘンチックな演出や、ロケ地となった福建省厦門(アモイ)市の風光明媚な街並や風景も印象的だ。
そんな監督の世界を体現するのが、本格的にダンスの勉強をして撮影に臨んだという香港の人気モデル兼女優のアンジェラベイビーと、『モンガに散る』(10)をはじめ多くの映画やドラマで活躍する台湾の人気俳優マーク・チャオ。2人の共演は映画『ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black&White Episode1』(12)に続き2回目だ。1作目ではあまり接点がなかったそうだが、本作では恋人同士という設定そのままに息もぴったり。
また、マークと父親アレン・チャオ(趙樹海)の親子共演も話題になった。マークはバンドのボーカルという役柄を演じるにあたって弾けなかったギターを弾き語りができるまでにマスターし、歌も披露。主題曲となった『哭得像小孩』はシンガーソング・ライターで出演もしているシンディ・ユェン(袁詠琳)の作詞作曲によるものだ。彼女はジェイ・チョウ(周杰倫)が代表を務めるJVR Musicの所属アーティストであり、本作が映画デビューとは思えぬ生き生きした表情を見せている。
ほかに、歌手でもあり小説家でもあるマルチな才能のティエン・ユエン(田原)がバンドのキーボードプレーヤーを、そして中国のベテラン女優ジャン・シャン(江珊)は愛情深い母親役を印象的に演じている。全編にわたって監督のこだわりに貫かれた映像とラストまで練りに練られた脚本が秀逸な、珠玉のラブストーリーだ。