1940年代末、イギリス人と香港女性の間に生まれた子供が、流産したばかりの貧しい蛋民の夫婦に買い取られる。赤ん坊は華泉と名付けられ、船の上で成長。人とは違う外見から“あいの子”と揶揄される彼を、母は、その後生まれた弟妹たちと分け隔てなく可愛がった。
ある日、華泉はプロテスタントの牧師から学ぶことを勧められた。「漁師に学はいらない」と反対する父だったが、母の後押しで船を降り、教会の夜学で文字を学び始める。間もなく父が海で命を落とし、自分が買われた子だと知った彼は、長男として身を粉にして働き出す。
やがて憧れの東インド会社に雑用係として採用されると、21歳にして初めて正式な小学校教育を受けることに。イギリス人の上司から差別的な言葉を投げつけられながらも、華泉はたゆまぬ努力を重ねて次第に頭角を現していく。反英運動に加担した同僚が逮捕されたことなど関係なく、正社員となり幼馴染みの娣とも結婚、順調に出世の道を歩み続けていた。その頃、アメリカで建築学を学んだエリート女性の菲安が仕事のパートナーとして現れる。菲安は上流社会での振る舞いを華泉に教え、彼もその知識を吸収していく。ついには中国人として初の重役にまで上りつめたが、華泉は常にどこかで「自分は何者なのか?」と問い続けていた。
時は流れ、香港が中国に返還される時がやってきた。かつて赤ん坊の自分が売られた場所を訪ねた華泉は、自らの出生の秘密について聞かされる。それと同時に、改めて育ての母の深い愛情を知るのだった。